
2025.07.12
2025.07.13
【祝開店】昭和の蔵がカフェに大変身!母娘で営む「蔵cafe403」に流れる、やさしくて静かな時間
朝霞市カフェ
リノベーション
「ただ、残したかったんです。父の蔵も、思い出も」
そう話すのは、朝霞市内にひっそりと佇むカフェ「蔵cafe403」の店主。築およそ60年、もともとは農家の物置として使われていた建物を、母と娘が2年計画でリノベーションし、2025年春にカフェとしてオープンしました。

まるで昔話の一節を訪れたような、ぬくもりと静けさが漂う空間。その裏には、親子の深い想いと、「本物を味わってほしい」という覚悟がありました。
「ここを残したい」、母の想いに、娘が応えた

きっかけは、実家にひっそりと残されていた一棟の蔵。
もともとは農家だった祖父母が、農機具や収穫物を保管する物置として使っていたもので、長年ほとんど手が入れられないままになっていました。

「今は父がこの広い敷地にひとりで暮らしていて、だったらこの蔵を壊すんじゃなくて、人が集まれる場所として生かせないかなと思ったんです」
母がそう考え始めたのは、実家の今後を真剣に考えるようになったタイミングでした。

その想いを娘に打ち明けると、意外にも「やってみたい!」と力強い返事が返ってきたそうです。
当時、娘さんは保育士として働いていましたが、そこから一念発起。本格的にコーヒーを学ぶためスクールに1年通い、同時に有名カフェでも1年間修業。その一方で、実家の蔵を「カフェにする」という一大プロジェクトが、母娘の二人三脚で動き出しました。

改装では、使える木材はすべて残してほしいと地元の工務店にお願いし、大工さんに教わりながら、自分たちでできる部分はDIY。週末になると、家族みんなで作業に打ち込みました。
「祖父が使っていた勉強机の脚を切ってテーブルにしたり、蔵から見つかった古材で収納棚やテラス席の椅子とテーブルを作ったり…。できるだけ物を買わず、この蔵にあったものを活かすことにこだわりました」
照明やインテリアに至るまで、何度も手を加えながら完成させた空間。
そのすべてに、家族の記憶と、手の温もりが宿っています。
カフェ「蔵cafe403」の魅力6選

祖父の代から受け継がれてきた蔵は、母と娘の手で丁寧に改装され、コーヒーの香りに包まれたカフェ「蔵cafe403」へ生まれ変わりました。
今回、実際に訪れて感じた「蔵cafe403」の魅力を、6つのポイントにまとめてご紹介します。
60年の歴史が息づく、蔵のインテリア

このカフェの魅力は、なんといってもその内装です。梁や柱、建具のひとつひとつに「残す」という意志が宿っています。
椅子やテーブルも、既製品ではなく、蔵に眠っていた木材や家具をリメイクしたものばかり。

祖父の代から使われていた勉強机は、この場所の記憶を語る名脇役です。

壁や天井にも、蔵時代の木材がふんだんに使われ、カウンター奥の小窓からはやわらかな自然光が差し込みます。
味のある木製の椅子と素朴なテーブル、隅に置かれた鉢植えのグリーンも、まるでこの空間が昔からそこにあったかのように馴染んでいます。

竹編みのカゴも、かつて農家だった祖父母が使っていたもの。現在は「荷物カゴ」として、来店客が自由に使えるようになっています。

木のぬくもりに包まれたテラス席には、ゆっくり座れるベンチが並んでいます。屋根はしっかりと前に張り出しているので、雨の日でもぬれずに、安心してのんびりできます。
まるで山小屋のウッドデッキにいるような、ほっと落ち着く心地よさ。
「これがDIYで作られたなんて…」と、思わず感心してしまいます。

かつての農家の縁台をリメイクしたベンチには、厚手のクッションが添えられ、長居しても疲れない心配りがされています。晴れた日にはやわらかな光と風を感じながら過ごせる特等席です。

屋根を見上げると、荒縄で吊るされた古い木の梯子。かつて蔵で使われていたものだそうで、ただの飾りではなく、この場所の記憶がそのままインテリアになっています。
そんな発見も、このカフェの楽しみのひとつです。
本格派!娘が淹れるこだわりのコーヒー

カフェで提供されるのは、娘さんが丁寧に淹れるスペシャリティコーヒー。都内のカフェでの勤務経験も活かしながら、ドリップコーヒーからカフェラテ、夏には炭酸で割った「エスプレッソトニック」など、ユニークなメニューも提供しています。

カウンター奥で存在感を放つのは、バリスタたちの憧れ「la marzocco(ラ・マルゾッコ)」のエスプレッソマシン。一杯を淹れるまでの工程すべてに、妥協のないこだわりが詰まっています。

豆は一杯ずつグラインダーで挽きたてます。分量は0.1g単位で管理され、香りも味もブレることなく仕上げられます。

抽出の瞬間には、エスプレッソが濃く、とろりとした筋を描いて落ちていく、その美しさに、つい見とれてしまうほどです。
一見静かな作業のようでいて、実は緻密で、繊細。そんな一杯が、カフェの空間全体に心地よい緊張感とぬくもりを添えています。
★カフェラテ

ドリンクメニューの中でも「カフェラテ」は一押しです。
氷の上から注がれたエスプレッソが、ミルクの白にゆっくりと溶けてゆく。アイスカフェラテは、模様こそ描かれないけれど、グラスの中に広がるグラデーションが涼やかで、目にも美味しい一杯です。

一方、ホットで頼めば、ふんわりと泡立てられたミルクに、手描きのラテアートがそっと浮かびます。葉っぱのような模様、花びらのような曲線。そのひとつひとつに、丁寧な手仕事のぬくもりが感じられ、カップを手に取るだけで、ふっと肩の力が抜けていくようなやさしさがあります。
★エスプレッソトニック

「今はまだメニュー数も少ないんですが、ひとつひとつに思い入れがあります。例えば、エスプレッソトニックは、ノンアルだけどお酒好きな人にも好まれていて、意外とハマる方も多いんですよ」
見た目にも涼しげな2層のドリンク。炭酸のシュワっとした透明感の上に、濃厚なエスプレッソを静かに注ぎ入れる、その瞬間、まるでグラスの中に小さな夕焼けが浮かび上がるよう。

トニックウォーターの爽快な苦味と、エスプレッソの深みが合わさって、まるでノンアルコールのクラフトカクテルのような飲み心地に。
暑い日にぴったりの一杯として、夏いちばんのおすすめです。
★スコーンプレート

母が作るスイーツの看板メニューは、スコーンプレート。
ザクっと香ばしいスコーンに、クリームチーズやジャム、サラダが添えられたワンプレートは、ちょっと小腹を満たしたいときにぴったりです。

スコーンは、ひと口かじると、外はほろりと崩れるほど香ばしく、サクッとした食感が心地よいです。中はしっとり、ほどよい弾力があり、口の中でじんわりと広がるやさしい甘さ。ひとつひとつ丁寧に手づくりされた特別な一品です。
隠し味にほんの少しだけ加えた塩が、素材の甘みをキュッと引き締め、コーヒーとの相性をぐっと高めてくれます。

その日の気まぐれで登場する「本日のスイーツ」もあり、チーズケーキや抹茶系のスイーツなど、季節や素材によってラインナップは変わります。
畑の野菜と、地域へのつながり

敷地内の小さな畑では、祖父が野菜を育てており、トマト、ナス、キュウリ、ピーマンなどが収穫されます。サラダとして「スコーンプレート」に添えられることもあり、「地元の味」との出会いが楽しめます。

さらに、タイミングが合えば、その日の朝採れ野菜が販売されることも。茄子3本で100円だなんて、安すぎませんか(笑)。
テラス席はペットOK!

もうひとつ嬉しいのは、テラス席がペットOKであること。犬好きな店主のこだわりポイントです!
「お散歩がてら立ち寄る方も多くて、ワンちゃん連れの常連さんも増えてきました」
お散歩の途中にふらりと立ち寄ったり、常連のワンちゃんがしっぽをふってくつろいでいたり、そんな風景が、ここではすっかり日常に。
カフェ「蔵cafe403」で過ごすひとときが、家族みんなの思い出になります。
テイクアウトもOK

忙しい日やちょっとしたご褒美に、こだわりのコーヒーやスコーンをテイクアウトできるのも、蔵cafe403のうれしいポイント。とくに水出しコーヒーやエスプレッソトニックは、暑い季節に人気です。
また、「本日のスイーツ」がテイクアウト可能な日もあるので、公式インスタグラムや店頭のメニューをチェックしましょう。

裏手にあるパーキングには、4台の車を停められます。
ここにしかない時間が流れる場所

「蔵cafe403」は、ただのリノベカフェではありません。
家族の記憶を受け継ぎながら、地域の人たちとやさしくつながる、温かな場所です。
店内には、手づくりのインテリアと木のぬくもり、そして何より、気さくでお話し好きな母と娘の笑顔があふれています。

息の合った親子のやりとりに、ふとこちらまで和んでしまう。そんなひとときが、このカフェのいちばんの魅力かもしれません。
都会の喧騒を離れ、心と体がほっとほどけるような時間を、ここ「蔵cafe403」で過ごしてみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人いとうゆうすけ
人にフォーカスした取材記事を好みます。
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